新しい発見。「モノ創り」は冒険だ|Ridgeline

「コーヒー何にする?アイス?じゃあ俺もアイスにしようかな。パンナコッタも頼もうよ。」
そういうと、鞄からハンドメイドルアー「キョロキョロ140F」を取り出し、自身の偏愛について語り始める永井晋さん。取材を申し込むと「釣りの予定があるので…」ということも多い超現場主義なルアービルダーで、釣りへの熱い情熱を持ちながら、日々理想の”作品”を追い求める職人気質な一本気。今回は、そんな永井さん(RidgeLine代表)にモノ創りについてのお話を伺いました。

ルアー作りの醍醐味

ーールアーを作る上で一番熱くなる瞬間を教えてください。
(永井晋さん以下敬称略)

永井:できなかったことができるようになった瞬間よね。そのときにすごく熱くなるというか。作ったときに自分の思い描いてたアクションよりさらに良かった場合、予想外の動きが出た瞬間とかも嬉しいんだけど。普通だったらハンドメイドの教科書みたいなのがあったりして、そこの構造を真似すれば、その動きが出るわけじゃん。当然、素材によって同じような動きがでん場合はあるけどね。でも自分で考えたその重量配置と重量バランスですごく釣れそうなアクションが出たときっていうのは、当然嬉しいよね。

ルアーと共に「あなたの旅(挑戦)に幸運を。一生忘れないような思い出を。」というメッセージが添えられています。

永井:あとは、ずっと作ってたら、寸分狂わぬ削り出しもできるようになってくるんよ。人間の感覚ってすごいな。と思って。できなかったことが一つずつできるようになっていく。例えば、最近ギターをまた再開したんよね、昔弾けなかった曲や弾かなかった曲を1曲ずつ毎日やって、新しく2曲か3曲ぐらい何か弾けるようになったらいいなって弾いてるんだけど。それが弾けるようになったらすごく嬉しかったりとか… 自分が何かを覚えて成長していってるっていうのが、もの作りと繋がる同じような感覚かな。

筆者とカフェに来たときは、だいたいパンナコッタを頼んでいる永井さん。「俺、パンナコッタ好きなんだよね」と嬉しそうに笑うお茶目な一面に、ほっこり

ーー逆に、納得がいかなかったりとか何度もやり直してしまうみたいなこともあるんですか?

永井:そうそう。もう、うまくいかないことだらけよね。さっきも言ったギターのこともそうやけど、はじめは指が動かないじゃん。ルアーの削り出しも、はじめはうまくいかないし。素材をね、ウッドから発泡に変えたときも情報が当然ネットに出回ってなかったから、全部自分で試行錯誤しながら、攪拌率とか…

ーー攪拌率?

永井:そう。液体を攪拌する回数とか、型にそれを流し込むタイミングとか温度とか、そういったのもすごく製品のばらつきに繋がってくるから、そんな試行錯誤なんか無茶苦茶あったから、失敗なんか言うたらもう山ほどあるよね。でも、どっかにやっぱり正解はあって、そこをちょっとずつ失敗を積み重ねながら正解に導いていく。そういう過程は絶対通る道よね、うん。でも、夢中になって好きでやってることだから、続けられるよね。

モノ創り デザインの工程

ーーデザインの工程を詳しく知りたいんですけど、新しいルアーを開発するにあたって、まずはどういうことから始めるんですか?

永井:逆算して考えていく感じ。アクションを思い浮かべて、自分でどういうものが欲しいかっていうのをイメージして作っていく。キョロキョロって実は最初あの形じゃなかった。飛距離も出てアクションも出て、暴れすぎず、食わせのアクションを流れによって生み出してもらえるようなもの…っていうイメージのもと、ちょっとずつ微調整していきながら、ああいうふうな形になっていったっていう感じかな。

永井:で、人の真似をするのがもう極端に嫌だから、同じものは作りたくないと。本当に世界中どこを探してもないシステムっていうのを作りたかったし、それとアクションを同居させるっていう、もう、すごい冒険みたいな話やけど 笑 でも自分の中でそういうイメージがすごいあって。とにかく世に出てないものを作りたいよね。

永井:基本的にリップをつけてしまうと同じ往復運動になってダウンに流した時にもバタバタ暴れすぎてしまう。この流れを絶妙に逃したいっていうふうになると基本的にリップレスになるんやけど、リップレスになってしまうとちょっとイメージと違ってくるんよね。で、シーバスでいうと、ほぼナイト寄りのルアーになっちゃうから… そこをリップ付きより暴れささずに、リップレスみたいに流れを逃しすぎるんじゃなくって、その中間ぐらいの何かこう…ベストなバランスのアクションが欲しい、もっとベイトフィッシュライクな物が欲しいと思って、ああいうルアーになったんよね。

ーー逆だと思ってました。まず形を決めて、そこから動きを近づけていくイメージがありました。けどそうじゃないんですね。

永井:そう。だからね、釣り経験っていうのがすごい大事やと思うんよ。何回も何回も同じ場所に行って、足りないものを見つけていく。っていうのがすごい大事で、自分がいろんな経験を経て、考えて、「あ、こういったものが無い」っていうものを作れて初めてオリジナルになると思ってるから、だからそこはすごい考えてる。

永井さんにとってマーケティングとは

ーーマーケティングについての考え方を伺いたいです。

永井:市場をリサーチして作ったものじゃないから、あくまでその、自分が作りたいものを作ってそれを欲しいっていう人がいたから販売していったっていう形になるかな。どこにマーケティングが入るかっていうことで「商品」と「作品」は違うよね。先に市場をリサーチして商品開発したものっていうのは商品なんよね、完全に。で、とにかく自分の「偏愛の塊」をまず作って、後からそれをどう売っていくか、それが作品。

ーーツリ ツクル ミライでも言っておられましたね。

そうそう!ただ、作品と認めてくれるのはお客さんの判断によるものなんで、それが作品って言われるのは、お客さんが言うセリフであって自分のセリフではないから、偏愛物が作品になるかどうかっていうのはわからないけど、でも作品は偏愛の塊である必要があるし、そういうものだと思ってるってことかな。

ーーその場合、価格の付け方が難しくないですか?

永井:いや難しいよね。価格で迷ってた時、コアマン忘年会でね、永井晋の作ったルアーこれ何ぼにする?って話になって、で、8000円とかね。9000円とかって言ってたけど、ジョイクロ5000円でこれ9000円で出してて売れるかなと思ってて。自信がないときってすごい値段って下につけがちで、それは仕方ないと思うんだよね。でも自分の中で思い切ってつけた値段が、6500円で税込で7150円、もうこれでいいと。ハンドメイドだし。ただ、ありがちなハンドメイドで、手間がかかってるというだけの付加価値では売りたくなかったよね。

永井:今は発泡で作ってるけど、ウッドを手で削ってカービングして作った方がよっぽど手間もかかってるし。でもその値段でインジェクションより釣れないとか、同等っていうふうになってしまうと、それってどうなのかなっていうとこがあって…だからやっぱり自分的には実釣でもインジェクションにはできないことができる、インジェクションでは釣れないものが釣れると。

永井:ケースバイケースでインジェクションに負けるとこもあるけど、自分がこだわってるそのシチュエーションではインジェクションよりすごく釣れるし、キャッチ率が高い、フッキング率もすごく考えてフックの間隔も決めて作ってるからインジェクションにはない武器っていうのがある。だから、そこに対しての価格にしたかったよね、手間だけの問題じゃない。実釣能力もあって、手間もかかってて、どこにもないデザイン。ていうので、値段を出したっていう感じ。

ハンドメイドルアーに込めた”想い”

ーー永井さんは、どういう釣り人に向けてルアーを作っているのですか?

永井:既存のルアーを使うことに飽きた人で、ちょっとした変化ぐらいではもうね… 冷めてしまったようなアングラーに使ってほしい。自分がそうなんで、自分がずっと何かそういうところで釣りが面白くなくなったっていうところがあって。やり続ければまだまだ発見するようなことあるんだろうけど… 何かもう簡単に結果が出るものをずっと、もう答えがわかってしまったことをずっとやってても面白くない。だから、なんだか答えがわからないものを、宿題を、自分自身に与えるんよね。

永井:そういう、試行錯誤の果てにできたルアーをユーザーさんに渡した方が面白いかなと思って。意図を見つけてもらうのが、すごい自分の中で楽しみだったりもするから、あんまり使い方をあーだこうだと話してないはずなんよ。発見してほしいなと思って。

ーー使った人に新しい発見をもたらすような、ルアーを作っているのですね。

永井:結果そうなればいいなっていうだけの話やね。うん。自分で意図的にはしてない。でも、使った人が新しい発見をして、それを知らない人に伝えていってくれる口コミみたいなものがベースにあったら、すごく良いかな。既存のルアーでの釣り方を知ってる人が、新しいルアーとか、ちょっと思考を変えたものを求めてるなっていうのを何となく感じてて、そういう人がやっぱり使ってくれて、あのシチュエーションで、もう抜群に効くんですよとかっていう話が来るとやっぱこっちも嬉しいし。

ブランド立ち上げの経緯

ーー永井さんはどういった経緯でブランドを立ち上げたんですか?

永井:最初はサラリーマンをしながら、まずハンドメイドを始めたんよね。サラリーマン時代のときは営業の仕事がすごい多くて、人が作ったものをずっと販売していってたわけよね。それで、本当にいい商品もあれば、こんなん別に必要ないのになっていう商品も中にはあったりするわけで。

ーーなるほど、そうだったんですね。

永井:そうそう。その中でどういうお客さんが何を買うかとかって、サラリーマンしてた時代はすごいそれを学べた。そこで成績もトップになったり、燃え尽き症候群になったりして。もうずっと続かないなって、一生このサイクルをずっと続けるのはもう嫌だと思ったんよね。で、本当に自分がやりたいことって本当にこれなのか、と考えると絶対NOなわけなんよね。

永井:だから、自分でやりたいことをやり続けようと。自分に正直になるいうことが自分のモットーだから。それに本気で向き合うことによって、本当に何か歯車が変わったように人生が変わったよね。新しい出会い、ツララのオガケンさんとの出会いがあったり、フィンチのゲンキマンが使ってくれてマーレーコッドとか釣ってくれたから違う世間と繋がれたり。シーバス界隈ではコアマンさんにもお世話になったし、自分なりに発信もしてたから、そんなこんなで知ってる人はどんどん広がって… こういうの何て言うんだろう。自分が普通にサラリーマンしてたら絶対こういうことはなかっただろうなっていうことが、自分に正直に向き合ってチャレンジしたことによって、そういう方向に向かっていったよね。

永井:ブランドを立ち上げるときは山先くんと一緒に歩んできた。バリクラフトの山先くんと、テスターをずっとしてても結局先が見えないというか、ステータス目的のような路線に夢もなくて、なんかやる気がすごくなくなって、じゃあ、せっかくだったらルアーを作ろうって。山ちゃんとルアー作ることによって、人と違うようなことをすることで、何か違う道が開けていくんじゃないかって夢中になってやりだしたのが、最終的に起業に繋がったっていうわけで。山ちゃんがいたからここまで頑張ってこれた。二人で切磋琢磨してやってきたよね。山ちゃんがいなかったら、絶対ここまでやれてないと思う。

ー TO BE CONTINUED

 

プロフィール紹介
  • 永井 晋 Ridgeline代表

愛媛県在住。キョロキョロ140Fをはじめとする、ハンドメイドルアービルダー兼ルアーブランド「Ridgeline」代表。あらゆるターゲットを狙い続けたその経験から自己流のモノづくりを展開。
本人曰く、世の中の常識を疑う天邪鬼な職人であると同時に、自然の摂理を元に自己成長に拘る一本気な釣り人。現在の主なターゲットはアカメ・シーバス
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